こんにちは、自転車整備士の椿直之です。
今回は、お客様からよく聞かれる質問を取り上げてみます。
チェーンが伸びてきてたるんでしまっているので、1リンク短く詰めてもらえないか、という相談をよくいただきます。
チェーンが伸びやすいのは変速なしのシングルギアか、内装3段ギアのものが多いでしょう。
新車の状態からある程度の範囲までは、伸びてきても「チェーン引き」というシステムで後輪をフレームの後ろ側へズラすことによってチェーンの張りを戻す、という作業ができます。
ただし当然、後輪が後ろに移動できる範囲は決まっているので、その限界を越えてまでは調整できません。
調整できないところまで伸びてしまったら、基本はチェーン交換です。
この調整しきれなくなった限界点でお客様が思いつくのが、チェーンそのものを短くする、という手段です。
「昔はチェーンを詰めながら長く乗ったもんだ。」
なんていう人もいますが、これは大変危険な行為です。
そもそもチェーンが伸びるのは、8の字型になっているリンクの一つひとつの回転穴が摩耗して、それぞれのリンクの間隔があきすぎてしまっている状態です。

つまり、そこからいくら全長を短くしたとしても、たるみはなくなりますが、ギアの歯車の間隔とチェーンのリンクの間隔がもう合わなくなっているのです。
その上、そこまでチェーンが伸びてしまっているほどの期間乗っているなら、ギアの歯の部分も削れて短くなっている可能性まであります。
この状態で乗ると、強く踏み込んだタイミングでギアからチェーンが滑り落ち、勢いよく足を踏み外すことになります。
転倒する上、普通に転ぶよりもさらに大けがにつながる危険性があります。
一人で転ぶならまだしも、他人を巻き込む事故や、場所によっては自動車に轢かれる危険すらもはらんでいます。
昔ながらの自転車屋などではまだチェーン詰め作業を行っているところもあると思いますが、正しい知識を持っていれば、この作業がどんなに危険なことかわかるはずです。
伸びたら、交換。これが基本です。
店に頼まない、頼まれた店側も、なぜダメのかをしっかり説明した上で断らなければなりません。
客に言われた作業を、言われたとおりにやるのが店ではありません。
正しい知識をもって、安全に自転車を使ってもらうように指導するのが、自転車整備士の役割です。
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